なにかのはずみに「ピーーーーーーーーン」という高音が聞こえだしたり「シャアアアアアアアアアアア」という音が鳴りだしたりします。
他にも「ゴー・・・・」という低音系のものや、それらが混じり合った音もあります。
たいていのものはほっておくとすぐに消えることも多く、音が出現したりしなかったりを繰り返しているケースもあります。
この耳鳴り、どうしたわけか患者数としては増加の一途をたどっています。
統計に現れている数字だけをみても、・・・人はいると推定され、「耳鳴りだけど病院に行くほどではない」という人までを含めるとその数はもっと膨れ上がるでしょう。
病院を受診されるくらいの方々は、「ほっておいても音が消えなかった、生活に支障をきたすくらいの人」と考えると、耳鳴りは聴こえてるが受診していない人の数まで含めるときっと膨大なものになると思います。
今回は耳鼻科医として耳鳴りでお悩みの方へのメッセージを記事として書かせていただきました。
「耳鳴り」でちょっとネット検索してもらうと、どこかに必ずこの1文があるはずです。
「大したことではないと放置せずに、すぐに病院へ」
これはひとえに、みなさまの命を守るため。
どこにでもある腰痛が腹部大動脈瘤からのこともあるし、左肩の痛みが心筋梗塞の前兆のケースもあるし、ただの耳鳴りのはずが聴覚神経にできた腫瘍だったりすることもあるからです。
ほとんどの人には「放っておいても消えることが多いので様子を見てください」と言えるとしても、その方に限っては重篤な病が隠れているかも知れない。
だから、どんな健康関連サイトでも「まずは病院へ」と記載されているはずです。
耳鳴りに関しては、先に挙げた「聴神経腫瘍」や、ほっておくと進行してしまう「慢性中耳炎」「滲出性中耳炎」の懸念があるために、耳鼻科など受診をしてほしいところ。
あとひとつ、ぜひ知っておいてほしいのが生理的耳鳴り。
上記3つの「病気」から起こる耳鳴りとは真逆のものもあるのです。
夜、布団のなかでだったり、独りで静かな空間にいるときに「シーーーーーーン」といった音が聴こえてくることがあります。これが生理的耳鳴りと呼ばれるもので、なんら異常ではありません。
まったく音のしない空間を作って、そこに人を置いていくと、この耳鳴りが聴こえるようになります。
これはなにを意味しているかというと、「普段は聴こえていないけれど、耳鳴りはしている」ということなのです。
誰しも耳鳴りはしているが、聴こえていない人もいれば聴こえている人もいる、というちょっと興味深い現実があるんですね。
では、今、まさに耳鳴りを抱えて不安になってこのページをご覧になってくださった方であれば、まず落ち着いて深呼吸してください。
そして、耳鳴りが始まる前や気になり始めた頃、そのさらに前、あるいはここ数週間のスパンのことを思い返してみてください。
なにかキッカケのような出来事がなかったでしょうか?
もしあれば、そのことを頭の片隅に入れておいて最後まで読み進めてくださいね。
ネットにもありますように、耳鳴りなど異常を感じたらまず耳鼻科へ足を運んでみてください。
いくつかの検査や問診によって、投薬しつつ様子見か大きな総合病院を紹介するかなど、医師は判断するべきことをしていきます。
ただ、残念ながら医学をもってしても、すべての病気を解明できているというにはほど遠い状況なのです。
なぜなら医学は科学ではありますが、人の命を扱っているという特異性もあるからなんです。
たとえば、耳鳴りに関連性があるものとして、「突発性難聴」があります。
突発性難聴は、発症してから二週間以内に治療をするかどうかが予後を分ける、と言われています。
実際のところどうなのか、検証しようと思うなら、
突発性難聴を発症したが二週間以上、治療をしないグループ
突発性難聴を発症して二週間以内に治療を開始したグループ
に分けて経過を観察しないといけません。
本当に放置すると治りづらいのか?
そんなこと、人道上ゆるされませんよね?
動物実験しようにも、マウスは耳鳴りしてるかどうかもわかりませんし。
最先端医療を誇る病院であれ、最難関の医大の研修室であれ、こういった制限のあるなかで、日々の検証を積み重ねているのが実態です。
耳鳴りもまさにそうなんです。
医師にも聴こえる「他覚的耳鳴」というのもありますが、多くのケースは、患者さんご本人にしか聴こえていない「自覚的耳鳴」と呼ばれるものになります。
客観性がある、再現性があるのが科学の世界ですが、ご本人にしかわからない自覚的耳鳴りに関しては、患者さまとのやりとりを通じて手探りで改善への道すじをつけていかねばなりません。
単純化しすぎていますがわかりやすく書くと次のようなイメージ。
人体は目にしろ歯にしろ膝にしろ、年齢とともに自然と衰えを見せ始めるものだ。
「だから耳内部の細胞の老化ではないか?」
さまざまな症状は血流の良し悪しに左右されるものですよね。
「なので、耳周りの血行不良ではないか?」
脳も内臓もストレスのダメージを受けて変化をきたします。
「もしかすると、ストレスからきているのではないか?」
こういったことを医師は患者さまのお身体の状態や対話から判断して、お薬を決め、経過を観察していくわけです。
まさに患者さまとの交流を通じて治療が進んでいくのが耳鳴り治療です。
いままでの医学がもっている知識と経験をもとに、これが耳鳴りの原因ではないかというのをここで簡単にあげておきます。
この部位であれば、視認することも可能です。ここに問題があるケースとしては外耳(通路)に耳垢がたまっている場合、もしくは先に挙げた中耳炎などから耳鳴りが生じていることもあります。
中耳炎という言葉は耳にしたことはありますよね。内耳とは中耳のさらにその奥、鼓膜よりもまだ脳寄りの部位になります。
内耳には「蝸牛」というカタツムリに似た器官がありそのなかに有毛細胞というとても細かな細胞がびっしりと存在しているわけですが、この細胞が振動を「音」として感じる細胞とされているのです。
この細胞が加齢や巨大な音その他なんらかのダメージを受けたことにより、音の発生に異常をきたしているのではないか、とする説です。
脳の器質的問題ではなく、あくまでも脳における音の処理の問題です。
音は振動として鼓膜を震わせ、有毛細胞で音という電気信号に置き換えられたのちに、聴神経を伝わって脳で把握されます。しかし、脳に送り込まれた音をすべて認識しようとはしていません。
これをお読みの方も意識を画面から外してもらうと、、、、さっきまでは聴こえていなかったエアコンの静かな音が聴こえてきたりしませんか?または急に、外を走っている車の音が認識できたり。
そうです、画面に集中していたときは、「聴こえていたけれど、脳がシャットアウトしていた音」なのです。
こんなふうに、脳はときどきによって「この音は今はいらない」とシャットアウトしたり、「この会話は私の興味をそそる話しかも?」とボリュームをあげてきたりしているのです。
台所仕事をしていたときに、テレビから好きなタレントの声が聞こえてきた瞬間、それまで聞き流していた音声が耳に飛び込んでくるのもこの働きです。
このようにご本人さんは「不要」と思っている生理的な音を、脳が「これが重要なんだな」とボリュームをあげてくることによって耳鳴りを感じてしまうのではないか、と考えられてもいます。
耳鳴りが悪化する要因のひとつとして、患者さまが耳鳴りに意識を向け続けることによって
「(タレントの声のように)この音に意識を常に向けているな?この人にとってはこの音が重要なんだな?」
と、より積極的にボリュームをあげてくると、説明することが可能です。
今、これほどに医学が頼りにされているのは、救命分野とともに画像診断や顕微鏡などで、誰もが納得できるカタチにして見せられるようになったというのも大きいでしょう。
その医学をもってしても、耳鳴りの原因はこれだ、耳鳴りがしている場所はここだ、と今は言えません。
1は、はっきりしていますが、2と3については、画像には写らないですし、顕微鏡で発見できるウイルスも見つかりません。
また人道的にも、耳鳴りしている最中に耳の中や脳を解剖させていただくわけにもまいりませんよね。
現在は、今までに得てきた医学のすべての知識と経験をもとに、これらの仮説を原因として採用し、循環改善薬、漢方薬、ビタミン剤などを処方し、治療を行っているところです。
「耳鳴りは一生治らない」と言われて患者さまが落ち込んでしまった、という話しを耳にしたことがあります。
たしかに、原因が特定できていないので、特効薬も決定打もだせないのが現状です。
しかし、ここまで書いてきたことを思い出してください。
今の医学をもってしても、耳鳴りの原因がはっきりしていない。
私が言うのもなんですが、「今の医学」という前提のなかで通用するセリフなんですね。
みなさんもこうやってネットで情報を集められていることと思います。
そのときに覚えておいてほしいのは、「今の医学では」という言葉を、こっそり前につけて理解する習慣をつけていただくこと。
これは、ウソでも医学への批判でもありませんから。
もちろん、あと数年もすれば耳鳴りの原因が特定されて、特効薬が開発される可能性もあるんですよ。
糖尿病という病があります。
これも「完治しない。一生、血糖値をうまくコントロールしていくしかない」とされています。
しかし、いきなり膵臓が疲弊して発症するわけではなく、それまでの生活が糖尿病を発症させているわけです。
仮に、今日になって急に発症した耳鳴りであっても、原因は昨日までの生活のなにか、が引き金になっている可能性がある、ということなんです。
冒頭に書かせていただいたように、耳鳴りがはじまる前、にカギがあるかも知れません。
もちろん投薬などさまざまな治療によって耳鳴りが改善した患者さまも多数おられますし、当院でも行っているBスポット療法(これは耳ではなく鼻の奥への治療です)で、耳鳴りの改善がみられた患者さまも存在します。
なのでまずは、専門的知識を広くもつ耳鼻科の門を真っ先に叩いてもらうことをお薦めします。
医療機関での治療が万が一、功を奏さなかった場合でも
「そういえば、まだ耳鳴りの原因も治療法も決定打はなかったんだよな」
「今の医学では、ってことだよな」
と思ってみてください。
この分野はまだ「治らないのか、治せないのか」どちらかも断定できない事象なのです。
その上で、今までの生活の棚卸しもなさってみてほしいと思います。
なにも耳鳴り患者さまの生活が悪い!と言いたいんじゃないですよ。
当院にも、「姑さんの介護がはじまってから耳鳴りになったような気がする」「寝る間も惜しんで仕事をしていて、あるとき気がついたら耳鳴りがしてた」ということを聞かせてくれる患者さまがおられます。
生活が悪いんじゃなくて、追い詰められていた、という可能性。
今の医学では、これまでの生活やストレスは、残念ながらレントゲンやMRIには写りません。誰の目にもハッキリしないものは、原因とは断定できません。
これが科学的な態度というもの。
そうであれば、画像に写らないもので、しかも耳鳴り発症前にご自身の身に降り掛かっていたことがなかったか。
そういった視点で振り返ってみるのもムダではありません。
もし、「あっ、そういえば」と思い当たることがあれば、少しずつでも生活を改善していってほしいと思います。
糖尿病患者さんが、お薬も使いつつ、自分で糖分を控えていくように。
寝不足だったな、
自分の時間を作っていなかったな、
身体を冷やしすぎていたな、
そんな小さなことから。
生活が変われば体質も変わるでしょう。
体質が変われば、症状に変化が起きることも期待はできます。
なぜ西洋医学が現在の主流になっているのか。
個人的な見解ですが、「より科学的であるから」ではないかと思っています。
陰陽師や祈祷僧が病を治していた時代とは違い、画像、血液データなど誰がみても「これが原因だな」とわかる。
治療法も、実験を繰り返して誰がやっても同じになるように検証済み。
それに対して東洋医学は、施療者の経験や長年の勘に拠るところがあります。
東洋医学の施療者によって見解が分かれたり、施術内容が違ったりします。
誰にでも視えるわけではない「気の作用」がベースだったりもします。
西洋医学からすると「科学的ではない」「個人の勘に頼って治療するなんて!」となるわけです。
ただし、これだけは言っておいてもいいでしょう。
西洋医学に苦手な分野がない、わけではないということ。
それは科学的なデータが取れないものであったり、患者さまが慢性的に積み重ねてきた生活によるものだったりです。
もちろん、慢性的な生活習慣病は、現代西洋医学が定期的な血液検査・投薬などで進行を食い止め、重篤な病に発展するのを食い止める大きな役割を果たしているのは周知の事実です。
今、そこに存在する傷病に対しては、間違いなく西洋医学は効果を発揮します。
そうではなくて、長いスパンで体質から改善をもたらすといったような分野、病気を治すのではなく、病気になりにくい体質にしていくといったような健康に関する分野については、医学以外のいろんな視点からのアプローチが必要になってくると思われます。
西洋医学で対応していく病とは、「今の身体の状況が科学的に把握できる」ことと、「科学的に原因に迫っていくことができる」という前提が備わっているほうが向いています。
それ以外の分野であれば、代替医療、補完医療と言ったものも、決して否定しきれるものではないと思います。
つまり、今現在において「原因がはっきりしないもの」というジャンルの一部です。
代替医療とは、私たちが普通に受診する病院で行われている西洋医学に対し、自然医療の総称です。
そこにはみなさんもご存知の漢方や鍼灸、気功といった東洋医学。
整体、ヨガ、マッサージ、各国の伝統的な栄養学(アーユルベーダなどは有名)、カイロプラクティック、などがあります。
日本ではひっくるめて、保険の効かない、国として医療とは認めていない「民間療法」というくくりで認知されています。
これまでは、「西洋医学か東洋医学か」「西洋医学か、自然医療か」という対立的に優劣を争う見方もありましたが、双方をうまく取り入れた「統合医療」という考え方も提唱されはじめています。
いつの間にか耳鳴りの話しから飛んでしまいました。
なにが言いたかったかと言いますと、
「まずは病院へ」というのは決して誇大表現ではありません。
腰痛の原因が内臓疾患だった人もいます。
キチンと検査をしてもらう。
それでなにかが発見されたら「セーフ」なんですから。
異常が見つかれば、しっかりと指示を守っていただいて、それ以降の健康維持に努めてください。
その上で「原因がはっきりしない」「老化でしょう」「ストレスでしょう」と診断されたり「一生、付き合うしかありませんね」と言われたら代替医療、いわゆる民間療法も視野に入れてみてもいいと思います。
国が医療として認めていないので自己責任になりますが・・・
それでも、医療者である私がそれを言うのは、「科学的に原因が見つからないところに原因がある」可能性を完全には否定できないからです。
耳鳴りもまさにそうです。
まだ「耳鳴りの原因はこれだ!」と西洋医学をもってして確定できていない以上、西洋医学が注目していない部分に、その原因がある可能性も残っていることになります。
また、「病気を治療する」「命を救う」のが現代西洋医学だとすると、治療するのではなくて、「自然治癒力を高める」という点において東洋医学など民間療法と呼ばれるものとお互いに補えあえる部分はあるでしょう。
耳鳴りにおいて、「耳鳴りを治す」「耳鳴りを止める」ことに限界を感じた場合などに、時間はかかるでしょうが、「身体の自然治癒力そのもの」を高めて耳鳴りの変化を促す、という対応はあって良いと思います。
「今の医学では」「科学的に原因を特定できない」ものに関しては、現代西洋医学以外というジャンルの健康法に、なにかヒントがあるかも知れない。ということです。
いちばんはじめに、
「耳鳴りがしはじめたときに、なにかキッカケはなかったですか?」とお聞きしました。
検査では異常が見つからず、投薬も功を奏しなければ、、、、
もしかしたら、画像には写らないそのキッカケこそが、耳鳴りの引き金になっていたのかも知れません。
科学ではそれはわかりません。
しかし、患者さまのお話をしっかりと聞き取り、長年の生活や思考のクセから身体の状態を導き出せる東洋医学系のジャンルや、器質的な故障ではなく、目に見えない自律神経系の調整に長けた技術がこの世にはいくらでも存在します。
耳鼻科医としては科学的検査にのっとって、しっかりと検証された治療法で丁寧に対応し続けてまいります。
常に最新の研究結果や最新の治療方法にアップロードしながら、治療を行ってまいります。
命の危険から患者さまを守るという面で、耳鳴りといえど、第一選択肢として耳鼻科を選んでください。
その上で、自然治癒力を高める療法や知識をもっていただくのは、とても結構なことだと思っています。
民間療法などで自然治癒力を高めたり、健康になるための体質改善の方法を治療と並行して取り入れていくのは、私もお薦めしたいところです。
整体などで肩こりをほぐしてもらったあとは耳鳴りが軽減する、という人もおられます。身体がガチガチに緊張していると耳鳴りにもいいはずはありません。
耳鳴り治療と体質改善・自然治癒力のアップ、両方が揃えば鬼に金棒ですよね。
医療法人
にしむら耳鼻咽喉科
院長:西村明子
(社)日本耳鼻咽喉科学会
耳鼻咽喉科専門医
〒581-0085
大阪府八尾市安中町3丁目7-6-2F
TEL 072-990-6565
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